地震と原発の安全性

日本は世界有数の地震国ですが、原発は本当に安全なのでしょうか? 政府は「日本の原発の規制基準は世界で最も厳しい」と主張していますが、実際のところはどうなのでしょうか? このページでは、日本における地震リスクと原発の耐震性、規制基準の実態、そして本当に安全なのかを詳しく解説します。

もくじ

日本の地震リスクと原発の耐震性

日本は世界でも有数の地震多発国ですが、地震が原発に重大な影響を及ぼす可能性について本格的に議論されるようになったのは、1995年の阪神・淡路大震災以降でした。2006年に原子炉の耐震基準が強化されましたが、その後も基準を上回る地震がたびたび発生している状況です。詳しくは、原発ゼロ社会への道2022年版(ゼロみち2022)のp.176 表4-2「基準地震動を超える揺れが観測された地震」をご覧ください。

能登半島地震で浮き彫りになったリスク

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸電力の志賀原発も被災しました。幸いにも、放射能漏れを伴う事故には至りませんでしたが、もし大規模な原発事故が発生していたらどうなっていたでしょうか。

  • 広範囲の家屋倒壊、道路寸断が起きていた中で、住民は避難できたのか?
  • 原発での事故対応に必要な人員や機材が、スムーズに現地に向かうことはできたのか?

さらに、震源地のすぐ近くには、住民の反対運動で建設が阻止された珠洲原発の計画地がありました。もし珠洲原発が建設され、稼働していた場合、この地震によってどのような事態が引き起こされていたのでしょうか?

原子力市民委員会 緊急オンラインシンポジウム「能登半島地震から問い直す原発稼働の危険性」
声明:「能登半島地震を自然からの重大な警告と受け止め、 改めて脱原発への政策転換を呼びかける」

「原発震災」とは――地震と原発事故が重なるとき

「原発震災」とは、大地震によって原発が深刻な事故を起こし、放射性物質の大量放出が引き起こされることで、通常の地震災害と放射能災害が複合し、被害が拡大・深刻化する破局的な事態を指します。

たとえば、地震や津波で道路や橋が寸断され、避難や被災者救援が困難になる中、原発事故が重なれば、対応は極めて困難になります。緊急作業に必要な人員や機材が現地に届かないなど、通常の災害対策ではとても対応しきれません。

2011年の福島第一原発事故は、まさにこの「原発震災」が現実となった事例です。地震大国である日本において、原発震災への備えが現実的に可能なのか、私たちは真剣に考える必要があります。

石橋克彦(1997)「原発震災破滅を避けるために」『科学』67(10)pp.720-724
石橋克彦(2012)『原発震災 警鐘の軌跡』(七つ森書館)

原発の重大事故とは? 起こる確率は「隕石より高い」!?

原発が最悪の事態に陥ると、短時間で周辺が立ち入り禁止になるほどの放射性物質が放出されるおそれがあります。

これまでに INES レベル7 とされた“重大事故” はチェルノブイリ(1986)と福島第一(2011)の 2件ですが、レベル 5 以上の深刻事故まで含めると、スリーマイル島(1979)を加えた 計 3件が発生しており、かつて「(重大事故の確率は)隕石が落ちるほどまれ」といわれた神話はとうに崩れています。

世界から見た日本の規制基準は、本当に厳しいのか?

日本より地震の少ない欧州の基準の方が厳しい

政府は「日本の原発の規制基準は世界で最も厳しい」と繰り返し強調していますが、実際には欧州の原発で採用されているいくつかの重要な安全設備や対策が、日本の規制基準には含まれていません

さらに、日本は地震・津波リスクが高い国であるにもかかわらず、防災避難計画をきちんと審査する仕組みができていません(計画の策定は自治体まかせで、原子力規制委員会による実効性の検証は実施されず、検証の基準等も定められていない)。とても「世界で最も厳しい」とは言えないものです。

原子力市民委員会の『原発ゼロ社会への道』2014年版(ゼロみち2014)p.160「4-7 新規制基準は「世界最高水準」には程遠い」[32.7MB]
原子力市民委員会の『原発ゼロ社会への道』2017年版(ゼロみち2017)p.199「4.7 原子力防災」[6.4MB]

規制基準を満たせば、安全なのか?

政府の「(原子力規制委員会が)基準に適合したとする原発は再稼働できる」という説明は、どうでしょうか。規制基準に適合(合格)した原発は、安全といえるのでしょうか?

実際のところ、原子力規制委員会の初代委員長である田中俊一氏は、「基準の適合性は見ているが、安全であるとは申し上げない」 と明言し、現在の委員長も同じ立場です。これは、現在の規制基準が「安全を保証するものではない」ということを意味しています。

つまり、日本の原発は「安全が確認されたから動かしている」のではなく、「基準を満たしたから動かしている」のであり、政府も原子力規制委員会も、原発の安全性に対する明確な責任は負わないまま、再稼働が進められている状況です。

原子力市民委員会の『原発ゼロ社会への道』2022年版(ゼロみち2022)p.175「4.3 原発安全性の技術的な争点と新規制基準の欠陥」、p.173「4.2.2.4 安全だと言わない・言えない新規制基準適合性審査」[CCNE1] [5.7MB]
原子力市民委員会特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』p.8「0.1 原子力プラントの特異な危険性」[CCNE1] [3.9MB]

原発事故が起こらなくても、解決できない課題

原発は地震リスクだけではありません。事故が起こらなくても「使用済み核燃料」や「放射性廃棄物」などの核のごみは生まれ続けています。しかも、日本では核のごみの最終処分地が決まっておらず、原発を動かし続ける限り、未来の世代に課題を残し続けることになります。

私たちは本当に原発に頼らなければならないのか?

日本は地震大国であり、原発の安全性を確保することが非常に難しい国ですが、それでも私たちは、原発に依存し続けるべきなのでしょうか? 再生可能エネルギーや、他の選択肢はないのでしょうか。

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